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これは実際に無免許運転で起訴された若者のお話しです
最終回「ヒートする検察官」
 控訴審の判決の日がやってきました。ところが、被告側から弁論の再開が申し入れられていたのです。
 被告人は70万円の贖罪寄付を行っていました。また、事件後にはじめたボランティア活動の実績を証拠として提出していました(裁判官の心証をよくしようと思ったのでしょう)。ところが逆に検察官の執拗さは沸騰点に達しました。火に油を注いだことは言うまでもありません。
 被告人が言うには、ボランティア団体を通じて月に1回施設を訪問して、お年寄りの世話をしたり施設まわりを掃除したりしていたそうです。被告人は奉仕活動をすることにより、反省していることを裁判官に示したかったのでしょう。
 検察官はその団体について被告人に対し、「定款を見たことがあるのか。どこにボランティアを行うと書いているのか。本部はどこか。一般の会社の一室にあるじゃないか。この団体は単なるモータークラブじゃないのか。」と怒りを込めて畳み掛けます。ついに被告人は絶句し、泣き出す有様です。


裁判は結審しました。被告人と検察官の熾烈な駆け引きはこれで終わりです。そして、なんと今から判決を下すというのです。法廷内は水を打ったようになりました。
 「被告人を懲役4月(4ヶ月)に処す。」「君は確かに反省をしているかもしれないが、今までの行為の積み重ねに対して裁判所はこのように判断しました。」裁判官はすでに心証を固めていた模様です。70万円の贖罪寄付はなんだったのでしょう。前科の執行猶予は取り消され、合わせて1年10ヶ月の懲役刑となりました。
 それにしても検察官は恐かった・・・
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