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これは、ある主婦が交通事故に遭遇し、不当な相手に本人訴訟を挑んだお話しです
第8回「最後の準備書面・・・そして、判決」
 なんとなく不利な感じで結審してしまいましたが、頼みの綱は前日に提出した準備書面です。相手側から提出された事故状況の証拠や「保険で補償されているのだから裁判は必要ない」という主張に対する反論です。他人が読んで理解してもらえるかを考えながら書くのは思ったよりたいへんでした。
 反論は以下の三点にまとめました。
 1・相手(被告)は車間距離が500mあったので車線変更したが、わたし(原告)の車が猛スピードで真横に走ってきたため事故が発生したと主張したのに対し、原告は方程式を使い原告車時速100キロ、被告車時速80キロとした場合、500m先を走行する被告車に追いつくには90秒が必要と計算。国産車は車速制限装置により時速180キロまでしか出せないが、仮に原告車の時速が200キロでも追いつくには15秒もかかる。被告が「距離があると判断し、右の合図を出し右の追い越し車線に寄せながら走行していた」というのであれば、それには5秒かかる。5秒で500m追いつくのは物理的に不可能であり、被告の主張は成り立たない。また、ゆるやかなカーブのため500m後方の自動車を確認できたかどうかもアヤシイ。
 2・雨によるスリップに対して、警察の事故証明では現場は曇りだったこと。
 3・自動車保険の約款を説明し、この裁判では自分の車両保険で補償されない格落ち損害や慰謝料などを請求したのであり、過剰請求や不当請求をしていないこと。

 判決の日がやってきました。この一ヶ月間、わたしは、若い頃の記憶がよみがえっていました。それは、受験を終え結果発表を待っているときのあの気持ちです。それも時間が足りなくて最後はドタバタ慌てて解答してしまい、結果に自信があるような中途半端だったような複雑な心境で待っていた気持ちです。今回は「勝訴」という合格発表がもらえるのでしょうか。

 相変わらず法廷の傍聴席には貸金請求事件の当事者が順番待ちであふれかえっていました。それを尻目に、さぁいよいよだと思っていると、裁判官が法廷に入ってきました。高まる鼓動に少し息苦しさをおぼえました。名前を呼ばれ法廷内に入りましたが、裁判官や職員の人たちは淡々と仕事をすすめているという感じです。わたしにとっては一生に一度?の判決ですが、彼らにとっては一日にいくつもの判決を出している中のひとつにすぎませんから、いちいち感慨にひたることなどないのでしょう。
 裁判官が判決文を読み上げました。
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