トップ
   プロフィール
   ブログ
  裁判員χ
   回想法
  講演会告知
   過去の講演会
  リンク集
  著書紹介

これは、ある主婦が交通事故に遭遇し、不当な相手に本人訴訟を挑んだお話しです
第5回「私の証人尋問」
 前回の不安を引きずったまま、証人尋問の日が来ました。午後からたっぷり1時間の枠をいただいています。事故当時運転していたわたしが自ら証人台に立ったわけですが、いつもの原告席とは違い、テレビドラマで犯人であろう人物が裁かれているイメージがあり、あまり居心地のよいものではありません。傍聴席にも沢山の人がいます。わたしの事件を見に来ているのではないと思いながらも「見られている」カンジがします。「がんばれ!」と自分自身に気合を入れ、わたしは“まな板の魚”になりました。
 通常は原告が証人に尋問を行うのですが、この場合、原告であるわたし自身が証人台に立っているので、原告席には誰もいません。ですから、裁判官が原告の代わりに尋問をしてくれるということです。
 本人であることを確認されてから「わたしはウソは申しません」という内容の宣誓をしました。裁判官からウソの証言をした場合、罰せられることもあると言われ、なにやら妙な緊張感が湧いてしまい、わたしはとんでもない場所に来てしまったのではないかと思いました。「この場から逃げたい」気持ちを抑え、さぁ、いよいよ尋問の開始です。
 事前に、こういうことを聞いてくださいという尋問内容を記した証拠申出書なるものを提出していましたが、裁判官はそれを読んでいないのか、それとも尋問内容が陳腐なものだったのか、項目にないことをどんどん聞いてきました。台本を無視したアドリブを突然要求された役者のような心境です。お芝居を観るのは好きですが、このような場所で役者の苦労がわかるなんて・・・。これには一瞬たじろぎましたが、これはお芝居ではありません。ありのままの事実を伝えればよいのです。そう思うとすぐに気は楽になりました。
 そして、尋問が進むにつれ、いっそう気が晴れてきました。さすがは審理のプロ・裁判官です。尋問の内容は的確に行われ、事故の状況や付随する事柄を見事に引き出してくれました。保険会社にも伝えきれなかった事故状況を表現することができ、気持ちよく尋問は終了しました。わたしに事故の過失が無かったことが裁判官に理解してもらえたように思え、前回の法廷で感じた「裁判を却下されるかもしれない」という不安は小さくなりました。
<<第4回へ     第6回へ>>
COPYRIGHT (C) FUKUYAMA